汚泥の夢
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朝起きてまず朝陽を浴びようだなんて、そんな真面目な性格ではないことは重々承知している。だからこそ水がいっぱい入った井戸底の桶のような重さの体を引くのに戦地から逃れる兵士のような意気込みが必要になるのだ。
頭に黒いもやのような違和感を幾つも抱えつつ、取り付かれた布団の抜け殻に後ろ髪を引かれる思いながらも、動くのが見えない歩道に乗っているかのように動く足に連れられて玄関へとやってきた。
コートを羽織る。棚を開き、誰も触らないバッグの中に入れた白と青のケースを手に取って玄関の扉を開く。日付が変わって初めて外と中の空気がわずかに混ざるのを感じながら、体内が屋外の空気に触れて、若干の自我の喪失に小さなショックを受ける。
階段を上る。
空は青く景色は澄んでいた。
白と青の箱から取り出した、細い円柱の物質を歯先でクッと噛んでカチッカチッと鳴るライターに私怨を込めつつ、燃え上がった炎で葉先を焼いた。
クリーニングを終えた配管へ、汚水を流すがごとく煙を一気に吸い込んだ。
人生なんてこれくらいでいい。
起きてまず体を汚泥にかえす。そこから一日を始めよう。