在宅勤務。その1 〜テレワーカーの1日〜

在宅勤務。その1。

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Photo by mzoon ahmad on Unsplash


耳元でドラムを叩くような爆音と共にベルが鳴った。

 

「〇〇起きろ、朝だ」

 

自分で吹き込んだ目覚ましと共に、ゆっくりと、自分が眠っていたことを思い出す。素肌に触れる毛布は温かく、少しでも体から離れれば気分屋の恋人のようにすぐに熱を冷ましてしまいそうだった。

 

起きようと思っても、体は脳と連絡を断ったかのように動かない。四肢の感覚は鈍く、立ち上がるだけの所作がまるで天竺への道筋にすら思えた。

 

それでも繰り返される音声に、少しずつ体が気づき始めるのを感じる。自分の名前を呼ぶ音声を入れているのは、名前を呼ばれた方が人は起きやすいとどこかで読んだからだ。

 

冷め切った鉄に熱を入れるように、気持ちを奮い立たせて手足を踏ん張った。幸い、地面からの反応は良好だ。二度、三度、力を入れたり緩めたりするうちに、腰のあたりから全身との連携を取り戻し始める。まるで徹夜明けの漫画家チームのように、のそのそと動き出した。

 

立ち上がってみる。視点が地面から、宙へと一気に持ち上がった。体はまだ重い。それでも体の奥の方で、燃料庫へ石炭がイヤイヤながら投じられ始めている。その証拠に、一歩、二歩と足がリビングへと動き出した。

 

ぼやけたテーブルや本棚の輪郭を避けて進み、FITSUと書かれた4段のタンスの前に立つ。下から2段目の引き戸を目掛けて手を伸ばし、引き出しの中から土木作業で使うような踵に丈夫な生地を当てた靴下を取り出す。

 

簡単ではないバランスで靴下を履くとそのまま玄関へと向かった。

 

寝巻きの上から触れる空気は冷たかった。生まれてから経験してきた朝の空気に体を強張らせながらも、おそるおそるといった様子で玄関を進み、扉の前にかけてある外套を羽織る。

 

扉を開け、外へと向かう。

 

いつかやめたい、と思いながら歩を進める。

 

どこへゆくかって? 決まっているーーーーラジオ体操だ。

 

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在宅ライターとして活動し始めて、とにかく生活習慣を整えることにほんとに苦労しています。自由で融通が効くのはメリットではありますが、家で生活しながらやるだけに、仕事だけの空間作りや、仕事のスケジュールやリズムを作るのが難しかったりします。

 

職場で働いていた時代は、『働くための場所』が用意されているため、職場とは仕事をするのに特化した環境だったのだな、と痛感しています。家には人生のあらゆるものが揃っています。仕事は人生の1部でしかなく、そこにいるだけでもあらゆるものの影響を受けながら作業をしている気がします。

 

ここでは在宅勤務をする1日を書いてみたいと思います。ゆっくり書いていこうと思うので、いくつかにわけて、気が向くたびに書いていこうと思います。どうぞお付き合いいただけたらと思います。