2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた十

Photo by Stella de Smit on Unsplash 喉に染み入る高濃度アルコールはえらく気分を薄っぺらい一枚岩の不敵なものへと変えさせた。鶏の煮込みから立ち上る湯気が鼻孔を通り、夜の繁華街のような空気の錯覚を味合わせる。 「歩いて行くの?」 「歩いて行く」 …

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた十

Photo by Ashwini Chaudhary on Unsplash インドの修行僧のような素朴で朗らかな笑みに手にはビールというアンマッチなバランスで現れたのは、スタッフの一人である山中だ。彼は新宿の劇団員に所属しながら、アルバイトをしつつ生計を立てている。キッチンと…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた十

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash カウンター席の横にある赤い暖簾の先には、蛍光灯の光とだらけた空気がある。そこは本来職場として機能するのに相応しい緊張感があるべきだが、長年勤めたスタッフが多いこの店では、日々釣りやゲームに勤しむ大学…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた九

Photo by Yoav Aziz on Unsplash この店で支払いを安く済ませたいのであれば、ポテトがおすすめだ。ボトルを入れて、お通しをカットすればずいぶん安く飲める。ただ客単価を異様に上げるお通しも、自店で見慣れてみれば、意外と体に良いものだと許容できるよ…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた八

Photo by Mathew Schwartz on Unsplash お店に入ってまず感じるのは、壁に染みついた焼き鳥の煙と衛生環境にわずかに気を遣った漂白剤の塩素の匂いだ。後者に関してはおそらく働いているときの感覚を脳が覚えているのであろう、ほのかに感じるだけで、すぐに…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた七

Photo by Joaquin Paz y Miño on Unsplash オレンジの看板が目に留まる。それは暗闇に漂う蛍のように、止り木をなくした人をからとるかのような曖昧な強さの光を灯し、腰を下ろす場所を示している。看板の灯りからは太い電源コードが伸びていて、お店の外壁…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた六

Photo by JuniperPhoton on Unsplash たぽん、という音が耳に心地よい。体が揺れる度に砂利とウィスキーの瓶が手の中で揺れる。足下から伸びる白線は店に着くまで三度ある交差点まで伸びて、ほろ酔いの気持ちで足を運ぶ私を案内してくれる。最も引っ越して一…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた五

Photo by Filipe de Rodrigues on Unsplash 酒が足らない、というわけではない。元々自分は酒を飲む方ではない。それでも居酒屋に長く勤めていれば、絶えずウィスキーの瓶を持ち歩く程度にはなる。ゲームの中なら、剣士が剣を持つように。私は酒を持っていた…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた四

Photo by John-Mark Smith on Unsplash 青い稜線の向こうから、陽が昇るのを感じた。果てしなく遠い世界から光はここまで旅をしてくるのだ。もしも途中に道がなければ、光はここへはたどり着かない。だとすればこの地球上のうえ程度、自分の足でたどり着けな…

ウィスキーの瓶を片手に池袋から富士山を目指し始めた三

ウィスキーの瓶を片手に 池袋から富士山を目指し始めた三 Photo by MARK S. on Unsplash 有給申請の書類を書き終え、シルバーのコールドテーブルの上にペンを置く。申請日数の枠には十の数字が書かれている。 十日ーー このお店に入って以来、五日と離れたこ…

西へ歩く2

Photo by Antonio Prado on Unsplash 最初は生活費を稼ぐために近場で働こうと、ぱっと目にとまって応募した居酒屋のアルバイト。これまで料理が得意ではなく、インスタント麺をゆがいたり、肉を炒めたりするばかりで、料理というものがまるでできなかった。…

西へ歩く

Photo by Monty Allen on Unsplash アスファルトからの照り返しで景色がゆがむにはまだ早い頃、ひょうきんな相棒を片手にこれから長い旅路をゆこうと道の上に立っていた。季節はまだ暑さの絶頂を迎えてはなかったが、すでに私の視界としては、ゆらゆらと行く…

現金支給も自殺5人も申請開始も蚊帳の外から眺めてる

Photo by Mitchell McCleary on Unsplash テレビで流れるザラザラとした音声はいつの間にか聞かれなくなったが、頭に浮かぶノイズの量は変わらなかった。音声は喫茶店で流れる無害なラジオのように、ただ緩やかな時間の流れを告げるように経済の危機や一般家…

不況よし

Photo by Aziz Acharki on Unsplash パナソニックの創業者・松下幸之助は 「好況よし、不況さらによし」 と言ったそうですが、それを聞いて「え?そうなの?」と胸が軽くなる思いだ。 毎月つけている家計簿のグラフが見事に右下がりなのを見て、心中火山にで…

汚泥の夢

お題「起きて最初にすること」 Photo by Brunel Johnson on Unsplash 朝起きてまず朝陽を浴びようだなんて、そんな真面目な性格ではないことは重々承知している。だからこそ水がいっぱい入った井戸底の桶のような重さの体を引くのに戦地から逃れる兵士のよう…

FFⅩⅤ→FFⅦ

Photo by kiwi thompson on Unsplash 廃墟の奥深くに沈んだ廃村の奥から生まれたようなエメラルドの光が霧状に地上へと吹き出しているのを見た。他には誰もいない。自分一人で始めた冒険は、いつの間にか超えてはいけない柵を跨いでしまっていた。 後退りを…

砂丘のような道の最中に

お題「最近知った言葉」 Photo by Rio Bahtiar on Unsplash 無蔵に並ぶ新聞紙を眺めると、言葉というのは無限に溢れてくるように思う。吸い込んでは濾過されて、空気のように循環し、喉奥からせり上がりこぼれ落ちてゆく。文字が浮かび上がるようとは、魔法…

キングダムの焼きそばはとても輝いて見えた。

お題「今日のおやつ」 Photo by Jonathan Kho on Unsplash タイル床の上を光が反射している。スーパーの床から這い上がるように視線を棚へと移すと、そこには見慣れない赤とオレンジのパッケージを纏った四角いケースがあった。 知っている。見たことある。…

たまごかけご飯

お題「朝ごはん」 Photo by Masaaki Komori on Unsplash メロディと白い湯気が炊飯器からのぼっている。 しゃもじの所在を探すとともに、今日の朝ごはんをどうしようか考えた。 ボタンを押して蓋が開くと、鰻を焼くような音と共に、調理の精霊が役目を終えた…

オペラント条件付きにはまっている

お題「マイブーム」 Photo by Louis Hansel @shotsoflouis on Unsplash 1日のタスクリストというものを作っており、それをチェックしながら作業を進めている。毎晩、寝る前になるとパソコンを開き、あらかじめ作り置きしてあるフォーマットをコピーして、1日…

響の実写映画を見た感想

響の実写映画をネットフリックスで見ました。 hibiki-the-movie.jp 以下、感想です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人の心と心がカーチェースをしているかのようでした。ただし一方は一般人、もう一方はオリンピック選手がごとく圧倒的な才能と…

明るく黄色い綺麗なお花

お題「今日の花」 Photo by Alexei Scutari on Unsplash 右方には繋いだ手を前後に振りながら、愉快な楽器隊のような音が鼻歌として聞こえてくる。 青い空にテラスのように並んだ雲が流れていく中、冬眠の名残を含んだコンクリートの上を歩く。立ち並んだ団…

思い出せば体がうずくほどに染み込んだ記憶

お題「思い出の一枚」 Photo by Eduardo Balderas on Unsplash 実家のリビングには私が学生時代に出場していた野球の試合の写真が飾ってある。打席の中がアップされたスイングしている写真には、縦縞のユニフォームに身を包んだ自分の姿が写っている。 今で…

静かな仕事場

Photo by Josep Castells on Unsplash お題「ひとりの時間の過ごし方」 我が家では絶えずハリケーンが発生している。 3秒に1度、立ち上がって右をみて、左をみて、それから明日のご飯と昨日のご飯のことを思い出してください。 「明日のご飯は? 昨日のご飯…

卒業

今週のお題「卒業」 Photo by Jorge Fernández Salas on Unsplash 卒業式と聞いて思い浮かぶのは、黒い筒と第二ボタン、などかもしれないが実際の自分の卒業式でその2つが印象に残っているかといえば、全く思い当たらない。毎年3月になるとテレビ番組で放送…

気持ちと味と、好みと今と

お題「思い出の味」 Photo by Nick Karvounis on Unsplash 「美味しくない」 「そうだね」 好きになった人が美味しくないと言うと、それは今後の食卓の方針に関わる問題だった。変換しよう。「お前はいらない」。耳で聞いた音は、心の奥底で確かにそう響いて…

在宅勤務。その3 〜 シャワーを浴びなければならない 〜

Photo by ONNE Beauty on Unsplash 我が家にはルールがある。まるで手順書に書かれ、貼り出されたかのようなルール。それを破れば漏れなく半日が潰れる。まるで土地の水に慣れるかのように、このルールに慣れるには2年の月日がかかった。 ルールその1。 玄関…

野球観戦

お題「行きたい場所」 Photo by Wade Austin Ellis on Unsplash 透明なカップの容積を黄色い液体が埋めてゆく。銀のユニフォームに四肢を守られたビール売りの女の子からカップをもらう。去り際に残す笑顔には、控室に貼られた売り上げ表の数字が滲み出てい…

在宅勤務。その2 〜 NOの階段 〜

Photo by Ant Rozetsky on Unsplash 張り過ぎたギターの弦のような体を引き摺り外へ出る。左右に分かれた階段はYESとNOの設問ともいえ、重い体を引きずって、脳内でNOと印字された階段を上って行った。途中、先日降った雨の名残である水溜りの冷たさがサンダ…

ニトリの白と青のストライプ枕

お題「愛用しているもの」 Photo by Agata Create on Unsplash 家では心配性な子供がひとり、離れると絶えず呼び出して話しかけられることが多々あるために、子供と同じ布団の上にてパソコンを触っている。そのためだいたいが膝の上での作業となるが、私は体…