在宅勤務。その3 〜 シャワーを浴びなければならない 〜

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Photo by ONNE Beauty on Unsplash

 

我が家にはルールがある。まるで手順書に書かれ、貼り出されたかのようなルール。それを破れば漏れなく半日が潰れる。まるで土地の水に慣れるかのように、このルールに慣れるには2年の月日がかかった。

 

ルールその1。

玄関の扉を一度超えたら、戻ってきた時シャワーを浴びなければならない。

 

もしも守れなければ、大量のよだれと涙、そして鼻水が寝具一体をべちょべちょに濡らし、ゴジラが尻尾をふるかのごとく家具や家電が薙ぎ倒される災が起きる。たとえ外のものを何も触っていなくとも、外気がダメなのだ。目に見えないだけで、風呂に10年入っていないホームレス10人と押しくら饅頭をしてきた直後に家のソファで寛いでいることを、刺殺す勢いの視線が誘導ミサイルよろしく腰のあたりに集中される。腰を砕くのだけはやめてほしいが、自他共に制御のきかないモンスターと認める精神と同居している身となれば、率先して協力し、家の治安維持に務める次第である。

 

シャワーを浴びればその災を避けれるだけでなく、目も覚めるのだから一石二鳥だ。ただし洗濯物は増え、シャンプーをこするのに腕の力を浪費して、薄毛を心配しながら髪を拭き散らかす朝は、決して清々しいと言えるものでもない。太陽は登るというのに、私はより地の底深くまで重力が増したかのように押しつぶされていくのだ。

 

これが理想の在宅業務、1日の始まりの朝の儀式である。