西へ歩く2

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Photo by Antonio Prado on Unsplash

 

最初は生活費を稼ぐために近場で働こうと、ぱっと目にとまって応募した居酒屋のアルバイト。これまで料理が得意ではなく、インスタント麺をゆがいたり、肉を炒めたりするばかりで、料理というものがまるでできなかった。特に過去勤めていたカラオケ店や牛丼屋でも、料理は苦手で将来飲食店の働き口には触りたくない、と思っている中での応募だった。

 

ならばなぜ居酒屋にいるのかと聞かれると、それは頭から湯気がでるような恥ずかしい理由なのだが、よくある炭火焼き○○といった看板を見て、「焼き肉屋なら料理じゃなくて肉を切ったり盛ったりするだけだろう」なんて安易な気持ちで電話をしたのだ。あそこでいいや、の適当さはまさか自分が何屋に働きに行くのかもわからないほどだった。

 

しかしそんな適当さで始めた居酒屋に7年もの間勤めることになるとは、まさかこの時には思いもしなかった。結果だけみれば100点の適当さで選んだ勤務先だったが、自分の性格と水が合っていたようである。どれだけ苦労して勤め先を選んでも、その日になれば行くのが億劫で、何度か勤めた後、シフト希望を出さなかったことなんていくらでもある。ところがここは週に5日から6日。がっつりシフト希望をだしてそれを7年続けた。これだけ適当に選んでうまくいくなら、探す苦労などいらないじゃないか、と思うと同時に、あのときは神様が私自身にわからないように手綱を引いてくれただけで、すべてはこのようにはいくまい、と思った。